第八話
著者:shauna
そして、次の日・・・
風呂場から女従業員とドローアの手によって運び出された聖戦士の面々は宛がわれた旅館の部屋の布団の上でまるで亡者よろしく「う〜」とか「あ〜」とか唸っていた。
まあ、しばらくこのまま涼しい部屋に放置しておくのが一番の治療だろう。なにせ、回復術のエキスパートが酔い潰れて寝ているし、ドローア自身も体内和浄(ピュアラル)ぐらいは使えるが、今回は自業自得・・・少し、お仕置きも兼ねてかけない方がいいだろう。
ドローアは一人廊下に出て、待ってた女将さんに頭を下げる。
「すみません・・・御迷惑おかけしてしまって・・・。」
「あぁ・・・いえいえ・・・制限無しにお酒をドンドン出してしまった私達にも責任は十分ありますので・・・」
「でも・・・お忙しいでしょうに・・・御手を煩わせてしまって・・・」
ドローアがそう言うと・・・
「ああ・・いえいえ・・・大丈夫ですよ。」
と女将さんが苦笑した。でも、その顔には自嘲めいたものが浮かんでいるのは気のせいだろうか・・・
「最近はもうとぉぉぉおおおおおおおぉぉぉぉぉぉおぉおぉぉぉっても暇で・・・」
一息入れた後に女将さんは長く深い溜息をついて、「すみません・・お客様に愚痴を漏らしてしまって・・・」と頭を下げた。
「え・・・えっと・・・何かあったんですか?」
ドローアがそう聞くと、女将さんは「ハイ・・・」と小さな声で答えた。
「実は、最近この近辺の旅館の客足が激減しているんです。」
「激減・・・ですか・・・」
「はい・・・実は・・・最近その・・・覗き魔が出るようになりまして・・・」
その後の女将さんの話を集約するとこう言うことだった。
なんでもここ最近、この温泉街に覗き魔がでるようになった。
それはどこの旅館に限ったことでは無く、この温泉街全体がであり、風呂場や脱衣場や宴会場に居ると、決まって何者かの視線を感じるのだという・・・もちろん、警察には申し出たのだが、犯人は一行に捕まらず、さらに弱り目に祟り目で、どうやら中々捕まらない犯人に対し宿泊客が実はその覗き魔は幽霊なのではないかという噂を流してしまった為、覗かれる危険性があるのと気味悪がられるのとで客足がばったり途絶えてしまったのだという。
ふと・・・
そう言えば・・・
「さっきのことなんですけど、宴会場に居る時に、あの・・・まだマトモだった方の黒い髪の人が何かを見たと・・・でも、きっとほかのお客さんですよね・・・。」
ドローアはそう言ってあははと笑ってみるが・・・女将さんの表情はそれに対してドンドン暗くなる・・・。
「本日・・・聖戦士御一行様以外にご宿泊なさってるお客様はいらっしゃいませんが・・・」
もはやかける言葉も見つからなかった。
「えっと・・・えっと・・・よければ私達もその覗き魔の逮捕に義協力しますよ?」
その言葉に女将さんの顔がパッと明るくなった。
「本当ですか!!?」
「え・・・えぇ・・・仕事柄私達そういうことしていることが多いし・・・丁度そういうことに関して情報通な人間も約2名居ますし・・・」
「まあまあ・・・それはそれは・・・ありがとうございます。逮捕の暁にはそれなりの報酬を支払わせていただきますので、どうぞよろしくお願い致します。」
そう言って女将さんは深々と頭を下げ、従業員室の方へと戻って行った。
残されたドローアはしばらく顎に手をかけて考える。
さて・・・どうしたものか・・・
とりあえず、まだ苦しんでいるであろう皆の面倒を見る為に一旦部屋に戻ることにしたのだった。
そして、さらに翌日。
なんとか回復したサーラとシルフィリアによって全員にピュアラルが掛けられ、やっと全員が回復する結果となった。
「ふ〜ん・・・なるほど・・・」
昨夜のいきさつを話して最初に納得したのはファルカス、アスロック、アリエスの男性陣だった。
「それは気の毒な話だな・・・」
ドローアもその言葉に「でしょう?」と同意を求める。
「で、手掛かりとかはあるのか?」
と聞いてきたのはアスロックだ。
「それが・・・警察も探しているらしいのですが、手掛かり一つ掴めず・・・完全にお手上げ状態だそうです。」
「ってことはまるで手がかりなしか・・・」
お手上げ状態のファルカスに対し、アスロックも同意する。
しかし・・・
「いや、そうでもないさ・・・」
と反論したのはアリエスだった。
「警察にも見つからないってことは相手はおそらく初犯じゃない。しかも、手掛かりが無いってことは指紋検出されていないってことだ。ってことは、相手は手袋をしているだろう。後、ここで目立たないってことは少なくとも浴衣姿かもしくはそれに準ずる格好のはずだ。後、俺が昨日の夜見た限りでは髪の色は明るい色のはずだ。じゃなきゃ、暗い中あそこまでハッキリと見えないはずだからな。」
「おぉ!!!流石剣聖ですね。」
「いや、全部シルフィーからの受け売りだけどね。ってことで、これをもとにシルフィーに作戦立ててもらうのが一番の近道だと思うけど・・・」
すごい!!!流石聖蒼貴族!!!世界の番犬とか悪の貴族とかの異名をとるだけのことはある。
じゃあ、早速・・・
「ってことで、シルフィリアさま・・・なにかいい方法・・・」
ゾクリ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
(――――――っっっっっっ!!!!!!)
聞いたドローアはもちろんのこと後ろでその様子を見ていた男達まで全員の毛が逆立つ程の痛烈で鋭い感覚に襲われた。
まるで、自分の周りに超巨大な大蛇がトグロを巻いて今にも襲い掛かってくるかのような、抗うことの許されない絶対的な恐怖。
自分に向けられているわけでもないのに大の男3人が冷汗をかく程のその殺気は間違いなく部屋の片隅で先に作戦会議を始めていた女性陣4人から向けられていた。
「あの・・・シルフィリア・・・さま・・・」
ドローアの声を無視して、シルフィリア達はそのまま会議を続ける。
「サーラさ〜ん。犯人絶対捕まえましょうね〜?」
「もちろんよ、シルちゃん〜。そして、捕まえた末には・・・わかってるわね。ミーティアちゃん。セレナさん。」
「もちろん・・・警察になんて渡したりしないわ。すぐに聖王国の地下牢に繋いであげる・・・」
「そして、その後は・・・ウフフフフ・・・」
なんだこの地獄の底から込み上げてくるような声での会話は・・・
本当にあの人たちの口から発してるのだろうか・・・いや、きっと違う!!隣の部屋にきっと魔王かなんかが宿泊してるんだ!!!あれが親愛なる王女様方と天才魔法医と大貴族子女だなんて信じたくない!!!信じちゃいけない気がする!!!
「まったく・・・困った犯人さんねぇ〜・・・(セレナ)」
「まったくよね〜・・・ファルカスならいざ知らず、私の裸を覗き見するなんて・・・(サーラ)」
「そうですね・・・アリエス様ならともかく、私の裸を少しでも見るなんて・・・これはメチャ許せませんよねぇ〜・・・ぶっちゃけ万死に値しますよねぇ〜・・・クフフ・・・(シルフィリア)」
「確かシルフィリア様の呪文の中に、相手の脳神経の伝達信号を操って、死んだ方がマシだと思えるほどの苦痛を与える呪文あったわよねぇ〜・・・まあ、それに加えて、“電気ショック”とかで拷問した後に、最後は“鉄の処女”でトドメなんてどう?(ミーティア)」
「素晴らしい考えねミーティアちゃん。(サーラ)」
「“凌遅刑”って知ってますかぁ〜?刃物で生きているの人間の体の生肉を少しずつ削ぎ落していき、長時間をかけて死に至らしめる刑罰なんですよぉ〜?(シルフィリア)」
「それもいいわねぇ〜・・・じゃあ、死ぬ直前まで“凌遅刑”にした後、最後は火炙りでトドメなんてどう?知ってる?火炙りって、火の熱さで失神することも出来ずただただ体に刻まれる痛みを味わいながら死んでいくのよぉ〜(セレナ)」
・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
「・・・ファルカスさん、アスロックさん、アリエスさま!!!!なんとしても・・・彼女達より先に犯人を捕まえて!!!犯人の為にも!!!そして出来るだけ早く警察に!!!!!!」
「「「了解!!!!」」」
今の女性陣の放っていた言葉・・・間違いない。あれは本気だ。本気で全部やる気だ!!!犯人を捕まえて警察には引き渡さず、王国の地下牢獄に監禁し、拷問し、最終的には公開処刑するつもりだ!!!
どっかの女子高生達が自分の好きな人が覗きをしたからって、江戸時代の拷問をするのはまだ許せるけど(許していいのか?)、この人たちは社会的権限があるからマジでヤバい!!!中でもシルフィリア!!!聖蒼貴族の力をもってすれば人ひとりの死亡ぐらい簡単に揉み消しそうだし!!!
こうして・・・女性陣vs男性陣の犯人早逮捕勝負はデットヒートしていくのだった・・・。
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